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赦し

少し前にテレビでテキサス州ダラスで起きた警官による殺人事件が紹介されていた。
被害者は黒人男性で、犯人は白人女性であった。自宅を間違えた勤務明けの警官が部屋にいた男性を侵入者と勘違いし、発砲し殺害した。
対象が黒人男性だったから警告もせずに発砲したのではないかということがポイントになったようだ。
人種差別問題が絡み注目されたこの事件は、結果的に白人の警察官が黒人を殺害した事件としては珍しく有罪になった。

裁判で判決が下されたあと、被害者の弟・ブラント・ジーンさんは犯人を赦し、ハグをした。ブラントさんのスピーチの翻訳は別の方の記事をご参考ください。ハグをしているときに、加害者・アンバー・ガイガーが何かを言ってブラントさんもうなづいている。
youtu.be

この動画中でブラントさんにハグをしてもいいかと問われ、「yes」といった裁判官のタミー・ケンプさんもその後加害者に今後の助言をし、聖書を渡し抱きしめたと伝えられている。
法廷に聖書を持ち込んだこの行動には批判も上がっているようだが、ダライラマ法王による仏教の考え方を指針にするのであれば、刑務所に入るときより良い人間になってほしいと願うタミーさんの思いが起こした行動は良い行動といえるのではないか。

ひとつの行為が悪い行いなのか、よい行いなのかを決める境界線は、その行為をしたときの心の動機によって決まります。
池上彰と考える、仏教って何ですか?』池上彰著.飛鳥新社.2014 より

しかし、話にはまだ続きがある。
判決の数日後に遺族のために証言をした証人が何者かに殺害されたようだ。証言したことと無関係とするには無理があるように思う。
ダラス警察はこの事件で、証拠を隠滅しようと色々と工作したようだし、まだまだ事件の根本的な問題は根深いようだ。

ブラントさんにはもちろんさまざまな苦しみや怒りがあったに違いない。そのうえで赦すという結論に至ったことや法廷での言動や行動はとても勇気のあるものだ。
それにしても赦すことはそう簡単にできることではない。世界で1番難しいことだと思う。
簡単に赦すことができないから、いつまでも報復合戦が終わらない。
自分だったら到底赦すことはできないだろう。

しかしクリスマスや年末を迎えるの時期はそんな自分のことも赦そうと思う。
「あなたが神のところへ行き、尋ねたならばきっと神はあなたのことを赦すでしょう」とブラントさんもスピーチ中で言っているように。